振返りで次へ活かす
振返りは、これまで行ってきた業務内容をある時点で反省する活動を言う。反省会と言えば悪かったことを改めなおすというマイナスからの出発であるが、 振返りは良かったことと悪かったことを全て洗い出すことに意義がある。多忙なプロジェクトでは、各々が目の前の業務をこなすだけになり、 プロジェクトマネージャやリーダーでさえも改まって業務を見直すということが減っていく。そこで、例えばPJが一段落したところでメンバーを集め、 これまで行ってきた業務の良かった点と悪かった点を共有し、次に活かすのである。
実際にどうやるのかをKPT分析を例にして説明する。関係者が集まり、自由発言を認めて業務の良かった点、悪かった点を上げてもらう。いわゆるブレーンストーミングの方式で行い、 悪かった点に関する議論や、原因の追究はこの時点では決して行わない。次に、次回も特に継続していくべき内容をあげてもらう。これは良かった点から自ずと決まってくるので、 簡単にまとまることが多い。そして、改善しなければならない内容をあげてもらう。これは悪かった点から多少踏み込んで、原因となった事象を回避するための方法を模索する。 さらに、今後新たな試みによってさらなる発展が期待できそうな内容をあげてもらえば良い。継続(Keep)、問題(Problem)、試行(Try)からKPT分析と呼ばれる、 かなり簡単で明確な振返りの手法である。振返りを行う上で重要なことは、誰かに責任転嫁するような雰囲気をなくし、次回から改善していこうというポジティブな考え方を メンバーに持ってもらうことである。
PDCAサイクル
PDCAとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(分析)、Action(修正)の頭文字をとった造語である。大学の講義にも出てくるほど有名な言葉で、プロセスのサイクルを 大まかに説明したものである。どのような仕事でも、ある目的に向かうためのプロセスに当てはめることができ、PDCAサイクルを何度も繰り返すことが業務の改善に直結する。 しかしながらPDCAを意識せずにいると、Checkまでも到達せずに、与えられた計画に対して実行を続けているだけになる。計画が予定通りに進んでいるのか、利益は得られているのか、 問題は何かを意識的に考えないと、PDCAサイクルを回すことは難しい。ITプロジェクトに関しても、業務が多忙を極めている現場はしばしばあり、そこで業務プロセスの分析や 修正を施すということがリスクにさえ感じてしまうものである。
振返りとPDCAサイクル
現場で業務を改善するためにどんな工夫をしているのかを聞くと、振返りを行っている、と答える現場が多い。前述の通り、良かったことと悪かったことを見直して 次につなげるという姿勢は大いに結構なことである。しかしながら、振返りを言い訳にしている現場も多くない。いくつかの課題が存在したとき、その場では解決せずに、 後々に行うであろう振返りで課題をあげてもらえれば改善活動を行っていることにもなり、そこで解決すれば良いという考え方をする人がいる。これは大きな間違いである。 振返りはPDCAサイクルそのものである。振返りをPJの最後に実施するということは、PDCAサイクルが1度だけしか回っていないことを意味する。
PDCAサイクルは、何度も回すことが重要である。例えば日報や週報でもよく、ある時点までの業務内容を見直す機会を増やし、何度も試行錯誤することが 業務改善につながる。振返りはPDCAサイクルのCheck、Actionに当たる。それらを繰り返し、PDCAサイクルをたくさん回すことが非常に重要なのである。